インタビューInterview

いとう瞳Hitomi Ito

イラストレーター

プロフィール

1973

千葉県生まれ

1996

武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画クラス 卒業

パレットクラブスクール受講後、公募展、個展等で作品発表しながら、主に広告、書籍を中心にイラストレーターとして活動中。
TIS(東京イラストレーターズ・ソサエティ)会員。

ムサビの版画コースの学生時代、授業や課題制作などで印象に残っていることがあれば教えてください。

4版種全てを最初に経験した事は、その技法を学ぶ事と同時に、自分の絵柄が様々な技法によってどう変化するのか?、という発見に繋がる授業でした。それぞれの版種の得意・不得意を知り、自分の表現とすり合わせていく作業は新鮮なことでした。 また、活版工房の見学では版画と印刷の関連性を意識する機会になったり、芸術祭では版画仲間と作った豆版画をまとめてカレンダーを作り、販売したのも楽しい思い出です。

今、イラストレーターとして活動されていますが、学生時代に版画を学んだことが、今の作品制作に何か影響を及ぼしていることはありますか?

選択していた木版画では、浮世絵にもあるような、ぼかし(グラデーション)を取り入れるのが好きでしたが、それは現在の絵のタッチの中で重要な存在になっています。また、色によってパズルのように版を分けて制作していた事は、作品の中に置く色の配置を意識していく事に繋がりました。こうした絵づくりの他にも、彫るという引き算の作業や、プレス機や製版など機材を使用する制作では、時として予想外の作品が生まれ、想像しているイメージの枠からはみ出させてくれました。 一枚の絵画として模索する事と、目的に沿って計画的に制作する事。版画制作で学んだその幅広い表現方法を、現在イラストレーターとして仕事をする上で引き継いできた実感があります。

いよいよ2023年4月からグラフィックアーツ専攻教授に就任され、指導を開始されますが、抱負をお聞かせください。

私の学生時代は、イラストレーションというジャンルが版画の授業の中になかった為、当初からイラストレーターという職業を意識していた私の版画作品に、当時の教授たちは多少困惑していたかもしれません。時代は進み、母校で指導する立場になるのは想像すらしておりませんでしたが、これまでの自分の仕事経験を踏まえ、表現の中における普遍的な部分や、社会の中で生まれてくる時代性を、共に探ったりアドバイスが出来るよう、自らもその時の"今"を感じ取っていたいと思っております。

グラフィックアーツ専攻を目指す受験生のみなさんにアドバイスをお願いします。

とにかく様々なものを見て、興味や疑問を持ち、自分の中に生まれる何かを感じ取ってください。 それが原動力となって表現されたものからは、しっかりと作者の気持ちが伝わってきます。 皆さんのどのような気持ちが、どういった表現に繋がっていくのか、 来年度より新名称となるグラフィックアーツ専攻で、一緒に学んでいける事をとても楽しみにしております!

映画宣伝美術・原作装画
松竹/2014年

アルバムジャケット イラストレーション
Sony Music/2022年

文庫本・カバーイラストレーション
角川文庫/2016年、2017年

小説挿絵
TEMPURA マガジン・フランス/2021年