学科概要About Graphic Arts

版画からグラフィックアーツへ

グラフィックアーツとは、
一般的には複製性を持つ平面視覚表現全般を指す言葉とされています。
例えば印刷を介した版画、イラストレーション、ブックアート、ポスターなど、多様なプリント表現がその中心となるものです。

浮世絵や数々の歴史的出版物に代表されるように、版画は美術作品の領域を超え、”社会とつながるメディア”として人々の生活に関わってきました。絵本やイラストレーション、写真、映像、立体など、アナログやデジタルを問わず、あらゆる複製メディア表現にその規範を広げる中、油絵学科グラフィックアーツ専攻では積み重ねられた版画の「伝統」に向き合うとともに、版画を起点としたグラフィックアーツ表現への展開を視野に入れ、ファインアートとデザインの領域が多層的に重なり合う、新たな学びの領域へ挑戦します。

解き放たれた版画、
グラフィックアーツという学びについて

版画の学びを止めるのではなく、積み重ねられてきた版画の歴史の上にイラストレーションや絵本、ブックアート、デジタル表現といった解き放たれた版画の姿を重ね合わせること。版画専攻において、既に実現されたファインアートとデザインを横断する多様化した学びの総体を、どのように言い表せば過不足なく、美術を志す人たちに伝えることができるのか。研究室で議論を重ねてきた結果、複製性を持つ平面視覚表現全般を指すグラフィックアーツという言葉こそが、私たちの掲げるカリキュラムや理念を的確に伝えることができる唯一の呼称である、という結論に至りました 。

印刷技術に出自を持つ版画は、社会の中で情報の複製と伝達という中枢的な機能を担いながら、柔軟にその姿を変えて今日まで受け継がれてきました。急速なデジタル化が進む現代においても、色褪せることなく、その存在価値を発信し続けています。美術作品として存在するだけでなく、日常生活の傍らでも、デザインという立ち位置に軸足を移して産業、そして社会を支えているのです。アナログやデジタルを問わず、あらゆる複製メディア表現にその規範が広がりつつある中、解き放たれた版画、すなわちグラフィックアーツの可能性を、教員やスタッフ、そして学生たちが一丸となって、とことん追求していく場の準備がようやく整いました。

専攻名称を変更した後も、しっかりと版画に向き合うことが、グラフィックアーツ専攻におけるすべての学びの出発点となるという考え方に変わりはありません。長い歴史の中で培われてきた版画の技法や表現展開を、高度な専門性の中でアカデミックに習得することからスタートします。そのうえで、イラストレーションや絵本、ブックアート、デジタル表現といったデザイン領域へと展開し、貴重書閲覧なども含めた幅広い視座も併せながら、学生一人一人の将来像を見据えたきめ細い指標を定め、指導にあたります。

01ファインアートとデザインの両方の領域を学ぶ

従来はデザイン領域の学びとして扱われてきた絵本やイラストレーション、ブックアート、デジタル表現などのカリキュラムをファインアート領域に位置する油絵学科の中のグラフィックアーツ専攻で学ぶことができます。入学後、1・2年次は油絵専攻とグラフィックアーツ専攻それぞれの選択授業を組み合わせて履修することができるため、美大を志望し始めた時点で、ファインアートかデザインか、進路の方向性を絞りきれていない受験生の選択肢が広がります。

02イラストレーターや絵本作家、ゲームクリエーターなどを志望する学生の選択肢となる

このような志向の学生の場合、油絵学科には従来、それに応える具体的なカリキュラムはありませんでしたが、グラフィックアーツ専攻では正式な授業として開講されており、第一線で活躍しているイラストレーターや絵本作家、コンセプトアーティストなどが実践的な指導にあたります。

03版画技法とグラフィックアーツ表現の両輪を重視したカリキュラム

例えば、日本が誇る伝統木版である浮世絵や新版画は、現代の漫画やアニメーションなどのビジュアル表現の源流として大きな影響を与えたと言っても過言ではありません。また、版画の画面のレイヤー構造に起因する平面視覚効果の原理は、最先端のデジタル表現と多くの共通点を有しています。このような点も、私たちがベーシックな版画技法の習得を、すべてのグラフィックアーツ専攻の学びの出発点に位置づける理由のひとつとなっており、作品制作においてアナログとデジタル、伝統と先端をバランスよく連動させながら、新しい表現の地平を切り拓いていくことを目指します。

04油絵学科油絵専攻の授業受講、および専攻変更が可能

1・2年次にはいくつかの授業が油絵専攻とグラフィックアーツ専攻の共同で開講されており、相互に選択受講が可能となっています。また、3年次進級時にグラフィックアーツ専攻⇄油絵学科専攻といった専攻変更が可能です。

05グローバル化する教育環境にも対応

グラフィックアーツ専攻では国際交流プロジェクトや訪問教授、協定留学生の派遣・受け入れなど、数多くの海外教育機関との国際交流の実施実績によって、英語対応の版画技法テキスト作成や、バイリンガル・ワークショップなどが実現されています。

カリキュラム入試について