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2019年度 協定校プロジェクトビリニュス芸術アカデミー/リトアニア

ビリニュス芸術アカデミーとの協定校プロジェクトは、水性木版画(伝統木版)のワークショップを通して、浮世絵以来の日本の版画文化の紹介と、両校の学生間の交流を目的として行われた。また、日々の研究の成果発表の場としてビリニュス市内のギャラリーGRAFOにおいて展覧会を開催した。ビリニュス芸術アカデミーは1793年に創立された伝統あるアカデミーで、グラフィック学科と本学版画専攻はこれまでも積極的な交流を行なってきた。近年、本学版画専攻でも版表現を書籍に展開する学生が増えているため、ブックアートに先進性のあるヴィリニュス芸術アカデミーとはたいへん有意義な関係の構築がされている。

欧米の凸版画は油性インクによる印刷が一般的であり、リトアニアも油性インクによる印刷である。そのため日本の水性木版画は珍しく、特に浮世絵版画とほぼ同じ方法であることが、北斎や写楽の人気と重なって大きな関心を集めた。

視線を吸い込む優しい画面の表情と、木や和紙などの特性を最大限活かす水性木版画の考え方が、エコロジカルな日本文化のひとつと映るようである。

版画作品の空間作りにおけるアプローチは現代では日本もリトアニアもさほど変わらないが、材料や技法への感覚はずいぶん違うはずである。油性刷りの画面の強靭さに比べたら、水性刷りはとても儚いと感じたのではないだろうか。しかしながら、グラフィック学科の学生達は、水性木版独特の紙の繊維に擦り込むような摺りをすぐに習得した。そのような素材への感性の豊かさは、リトアニアの人々の自然を愛する気質に通ずるのだろう。今回のプロジェクトを通して、美しい街と純粋な人々の心に触れ、多くの事を学び、相互を深く理解することができた。そして、この経験が各学生の今後の制作の糧となる事を確信している。

 

油絵学科版画研究室教授 遠藤竜太

実施日時:

2019年10月19日(土)- 29日(火)

場所:

ビリニュス芸術アカデミー、GRAFOギャラリー、ニダアートコロニー

参加者:

遠藤 竜太 (油絵学科版画研究室 教授)
所 彰宏 (油絵学科版画研究室 助手)
山田 ひかる (油絵学科版画研究室 教務補助員)
古賀 慧道 (大学院版画コース2年)
鈴木 英里子 (大学院版画コース2年)
岩下 美里 (大学院版画コース1年)
スウ コウウン (大学院版画コース1年)
関田 橘 (大学院版画コース1年)
中村 朝咲 (大学院版画コース1年)
早川 佳歩 (大学院版画コース1年)

スケジュール:

19日(土)

成田国際空港出発、ビリニュス国際空港到着。

20日(日)

ワークショップの打ち合わせと材料の準備。

21日(月)

GRAFO galleryにて展示設営作業。
18:00から会場内にてオープニングレセプション。

22日(火)

ワークショップ開始。スライドレクチャー、山田ひかる教務補助員によるデモンストレーションの後、バレンの竹皮包みを行う。自作のバレン完成後、それを用いて葛飾北斎作「神奈川沖浪裏」の模刻版を摺る。

23日(水)

木版画制作開始。鈴木英里子(大学院修士2年)によるデモンストレーションの後、個別制作へ。

24日(木)

個別制作。

25日(金)

ワークショップ最終日。無事参加者全員作品を完成させた。
展覧会終了後、搬出作業。

26日(土)

朝ビリニュス出発。ニダへ向けて研修旅行。夜ニダ到着。

27日(日)

トーマス・マン博物館やニダ各地にある文化財家屋、クルシュー砂州を見学。

28日(月)

ビリニュス国際空港出発。

29日(火)

成田国際空港到着。